テキスト:大重祐紀
昨秋の立教大学ジェンダーフォーラムでの『タンズ アンタイド』上映会&トークセッションを経て、同フォーラムの2022年度年報にノーマルスクリーンと私たちが執筆した特集記事「詩とサバイバル : 映画『タンズ アンタイド』から考える黒人ゲイ男性の表現とブラックフェミニズム」が掲載されました。
同誌は冊子として刊行された上で、立教大学リポジトリでも公開されております。私たちの特集もこちらからダウンロードしてお読みいただけます。
ノーマルスクリーンの秋田さんにはこの映画の上映に至るまでの経緯を執筆いただきました。当コレクティヴの福島さんからはグループでの字幕翻訳のプロセスと、その過程で知ることとなった80年代米国における黒人ゲイ男性の詩のシーンについて解説いただき、私(大重)はこの映画で大きく引用されているジョセフ・ビームのエッセイ「ブラザー・トゥ・ブラザー」について紹介しています。そして西山さんからは、「ブラザー・トゥ・ブラザー」が影響を受けたとされるオードリ・ロードのエッセイ「アイ・トゥ・アイ」の紹介と、ロードやバーバラ・スミスら黒人のレズビアンフェミニストたちと黒人ゲイ男性の詩人たちとの交流について執筆いただいています。本作の上映から私たちのコレクティヴの成立を経て、現在に至るまでのリサーチの一部をまとめた内容となっています。
秋田祥「Intro 」
福島淳「『タンズ アンタイド』からたどる黒人ゲイ男性の表現 」
大重祐紀「ジョセフ・ビーム“Brother to Brother”について」
西山敦子「『タンズ アンタイド』からブラックフェミニズムへ」
私個人としては、年報への執筆を経て、黒人のレズビアンフェミニストたち、また黒人ゲイ男性たちがお互いを見出し、寄り集まるための物理的な/想像的なスペースを築きあげていったことの切実さについて、これまでとは異なる水準で考えるようになりました。
現在翻訳中のコンバヒーリバー・コレクティヴ関連書籍 How We Get Free でもこのことが重要なポイントとなっていると考えており、本書に取り組む上でも指針となるものが得られたと感じています。引き続き本書の発行に向け準備を進めてまいります。