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アーティストのトルマリンとの交流会/「How to Freedom Dream」

テキスト:大重祐紀 / 編集:福島淳

2023年5月11日に上映団体ノーマルスクリーンの呼びかけで、アーティストでアクティヴィストのトルマリンを囲む小さな集まりが、東京のイメージフォーラム内のスペース「寺山修司」で開かれました。


トルマリン(Tourmaline)は、ニューヨークを拠点とする黒人クィアの映像作家。アーティストとして活動する以前から、トランスジェンダーの権利運動を中心として、コミュニティをオーガナイズする活動を行っていた人でもあります。映像作品の制作を始めてからは、『Happy Birthday マーシャ!』(2018)をはじめとして、米国における黒人のトランスジェンダーやノンバイナリーの人々の歴史や経験を探究する作品で知られています。アクティヴィストであった頃から警察暴力や刑務所の問題について取り組み、現在もこうした問題について積極的に発言しています。2020年には、19世紀の黒人トランス女性でセックスワーカーであったMary Jonesの生を描いた作品『Salacia』 がMoMAに収蔵されるなど、近年目ざましく活躍しているアーティストです。


ノーマルスクリーンは以前、トルマリンの作品『大西洋は骨の海』(2017年)を上映・紹介したことがありました。以下にリンクするページで、その作品を日本語字幕つきで見ることができます。同ページ内では作品についてのトルマリンのステイトメント/インタビューの日本語訳や、関連キーワード集も読むことができ、この翻訳や執筆・編集にはPFCメンバーの福島などが参加しております。


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3年前、Black Lives Matter運動が世界的な広がりを見せ、黒人のトランスジェンダーやノンバイナリーの人々が晒される暴力に対し声を上げるBlack Trans Lives Matter運動もまた大きな注目を集めました。そのさなかにVOGUEのサイトに掲載されたトルマリンのエッセイ「How to Freedom Dream」(2020年7月2日)に、私たちは深い感銘を受け、独自に翻訳し、コレクティヴの中で読書会を実施しました。



トルマリンはこのエッセイの中で、コミュニティ・オーガナイザーとして活動していた時に学んだ、「フリーダム・ドリームス」というコンセプトについて綴ります。


フリーダム・ドリームスは、私たちが過酷な状況に直面したときに絶望してしまうのではなく、その状況は変化しうると深く認識して立ち向かうときに生まれる。優しさと美しさとケアに満ちた世界は可能であるのみならず、そういう世界は必然的に到来すると知るときに。

「フリーダム・スクールの伝統に基づいた3つの問い」のうち「私たちが今持っているものの中で、手放したくないものはなんだろう?」という問いに注目したトルマリンは、「自分が夢見る世界にすでにどれほど包まれているのか」を認識します。


トルマリンは日々のささやかな喜びの経験をいくつも数え上げていきます。‘I’m freedom dreaming.’という少し不思議なフレーズが何度も繰り返され、日常の行いの一つひとつが持つ意味に広がりがもたらされていきます。


私が家のバスタブで髪を青に染め、レイシストの警官に奪われたその色を取り戻すとき—そしてその色に合わせたアイシャドーをつけるとき、私は自由であり夢見ている。私は自分自身の存在自体を美的な抵抗に変えている。

私が寝室からキッチンまで、リップ以外はなにもつけず裸で歩くとき、私は自由な夢を見ている。私は警官に抵抗するアクティヴィストでセックスワーカーのマーシャ・P・ジョンソンに交信している。50年前、裸でクリストファー通りを歩いている彼女に。

こうした一つひとつのエピソードとそこに与えられた意味を読んでいくうちに、社会の大きな変革を望むことと、日常の小さな安らぎを願うこととは実際には深く結びついているのだと気付かされます。


私が夢見る世界は安らぎで満ちている。黒人のトランスの命が大事[ブラック・トランス・ライブズ・マター]であるというだけでは私は満足しない。私は黒人のトランスの生が気楽で、楽しく、そして豊かな機会で満ちていてほしい。私は自分たちがこの世界に贈った溢れ出すほどの豊かさ[アバンダンス]が欲しい——アート、ケア、知識、そして美しさ——それが私たちに10倍になって返ってきてほしい。

トルマリンの言葉や作品は、オードリ・ロードらをはじめとするブラックフェミニストたちの思考や実践の歴史をはっきりと受け継いでいるものと私たちは捉えています。


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朗読するトルマリン

今回の東京でのトルマリンとの交流会では、『大西洋は骨の海』と『Pollinator』の2作品が上映されるとともに、PFCによる上述のエッセイの日本語訳が通訳の方から、また英語の原文がトルマリン本人から交互に朗読される時間がありました(写真)。その後、対話の時間が設けられ、コレクティヴの大重もエッセイの内容について簡単な質問をすることができました。



この会は、ノーマルスクリーンの秋田さんが東京に遊びに来ていたトルマリンと、ある繋がりから不意にお会いしたことから急展開のうちに実現したものでした。トルマリンはそのテキストから受ける印象のとおり、ジェントルであるとともに静謐なエネルギーを感じさせる方でした。私たちにとっても、日本の地でそのテキストを受けとり感銘と興奮のなか勝手に翻訳していた文章を、その作者ご本人とその日集った方々と共有できるというなんとも思いがけない機会であり、‘freedom dreaming’の意味を直に感じられる夜となりました。


現在、コレクティヴでは今回の交流会で朗読されたトルマリンのエッセイを改めて読む読書会を計画もしています。



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