これ自体はブラックフェミニストの文章でも、ブラックフェミニズムに特化して論じた文章でもありませんが、それらが生み出されてきた重要な文脈である、米国の黒人の闘争の歴史についての、とても学ぶところ多い日本語で読める文献です。
また、藤永さんが訳されたバーバラ・ランズビー著『ブラック・ライヴズ・マター運動誕生の歴史』(彩流社、2022|原著=2018)は、私たちが訳している『コンバヒーリバー・コレクティヴ宣言(仮題)』の重要な関連書でもあります。
アメリカ黒人の現代史で最も重要な政治社会運動が公民権運動とブラックパワー運動であるということは論を俟たない。本連載が試みるのは、 公民権運動/ブラックパワー運動の歴史に改めて接近することを通じて、 米国黒人現代史のなかで公民権運動の立つ位置を脱中心化し、 かくして解き放たれた運動理解の枠組みのなかにブラックパワー運動を置き直して、現代米国黒人史の語りの構図を変えることである。それにあたって本連載は、〈黒人自由闘争(Black Freedom Struggle)〉、つまり、 公民権運動とブラックパワー運動を重ね合わせてひとつの運動に包括する運動像を導入する。
連載第一回「学生非暴力調整委員会の誕生」より
連載「黒人自由闘争の歴史」
「学生非暴力調整委員会の誕生—黒人自由關争の歴史(一)」『岩波』2021年1月号
第二章で、重要な黒人女性活動家エラ・ベイカーが扱われている=「エラ・ベイカーと〈黒人自由闘争〉の胎動」。藤永さんは、2020年8月の民主党全国大会で、ジョー・バイデンが大統領候補指名受託演説をエラ・ベイカーの名への言及とともに切り出したというエピソードを紹介した上でこう書いています。「このように、ベイカーは、米国の大きな政治イベントでのクライマックスで引用されるような、傑出した人物である。しかし、残念なことに、日本で彼女のことを知っている者は、アメリカ研究者を除くとほとんどいない」と。「そこで、六十年代からさらに時代を遡り、彼女の足跡について詳しく紹介しておきたい。それはまた、〈黒人自由闘争〉の始まりの物語[ルビ:ナラティブ]でもあるからだ」。
「公民権運動の急進化と冷戦公民権ー黒人自由争の歴史(二)」『岩波』2021年4月号
「ロバート・F・ウィリアムスの抵抗ー黒人自由争の歴史(三)」『岩波』2021年10月号
「マルコムXの軌跡ー黒人自由闘争の歴史(四)」『岩波』2022年2月号
「ストークリー・カーマイケルとブラックパワーの興隆一黒人自由闘争の歴史(終)」『岩波』2022年6月号
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